『庭園』
四色分解という技法を利用しています。CMYKの4つの版を作り、多色を表現する技法です。
インクジェットプリントに似た技法ですが、シルクスクリーンでの四色分解では更に技法のプラスアルファが可能です。
プリントでは細かい表現をすることは色が表面に留まり、深くまで入らないと言う欠点があり、逆に深くまで色を入れれば、細かい表現は難しいという側面があります。
日本の染色の歴史では従来、深くまで色が入ると言うことが価値でした。
ただ、最近のデジタル技術の向上によって、細かい写真印刷のような表現も求められる様になってきました。
この柄では元々の図案から多色部分を淡い表現としています。
柄が出来た時から、最善の方法は四色分解を利用することでした。
その柄の淡さは四色分解の欠点であるドットの荒さをむしろ利用します。そうして淡い表現を生かしながら、色を少しでも深く入れます。
そうして独特の世界観を強調しつつ、更にここで別の色を加えます。
平面であるひし形の連続柄部分を新しい第五の版によって表現します。
四色分解の版の中で、ひし形を表現することは可能ですが、その色は四色のドット表現の集合により表される色であり、微妙な色表現が困難です。
別の版を起こすことにより、コントロールした色をベタで力強く染めることが可能です。
それによって世界に奥行きをもたらします。
いつか遊んだ庭。幻想の中の庭園。
記憶の中の夏は開放感と楽しい思い出に満ちています。
毎日が新鮮で、毎日にときめいていたあの頃。
幻想と現実の境界線はいつまでも淡いまま、きっと今もどこかで繋がっている。
そんな誰にでもあるはずの記憶の断片を。